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益田ミリさんの「『結婚しなくていいですか。』すーちゃんの明日」②

「『結婚しなくていいですか。』すーちゃんの明日」には、すーちゃんの先輩で、さわこさんという女性が登場します。

個人的には、すーちゃんよりもさわこさんの方に感情移入しちゃってます。

さわこさん

さわこさんはもうすぐ40歳、すーちゃんが大学生だった時のバイト先の社員だった人。

今もその会社に勤め、経理の仕事をしています。

会社の同期は男性しか残っておらず、独身の女子社員はさわこさんが一番先輩。

結婚願望はそれなりにありますが、実家暮らしでお母さんと一緒に認知症で寝たきりのおばぁちゃんの介護もしていて、「結婚したらお母さんがおばあちゃんと二人っきりになってしまう。」と心配しています。

すーちゃんとは、偶然近所のヨガ教室で再会して友達つきあいがまた始まるのですが、ヨガのない日はなるべく早く帰って、おばぁちゃんのお世話をしています。

寝たきりで認知症のおばぁちゃんのことを、「赤ちゃんみたいだけど、赤ちゃんと違ってもう成長はしないんだよね。」と複雑な気持ちになることがあります。

さわこさんのおばぁちゃん

ある日さわこさんが帰宅すると、お母さんが赤い目をして「おばぁちゃんが機嫌が悪くてゴハンを食べてくれない。」と困っていました。

おばぁちゃんは、お母さんのことの自分の姉と思っていて、それでついついわがままが出るそう。

さわこさんは、お土産に買ってきたプリンを持っておばぁちゃんの部屋に行きます。

おばぁちゃんは、さわこさんのことはお手伝いの人と思っているようで、「他人に迷惑をかけてはいけない。」と思い、わがままは言いません。

さわこさんがプリンを食べさせてあげると、「おいしい。」と言って食べてくれ、ごはんも食べる気になってくれました。

「おばぁちゃんはいろんなことを忘れているけど、何もかも忘れてしまったわけではなくて、『迷惑をかけている。』と謝ったり、『死んだ方がまし。』と悲しそうにしたり、淋しくなって夜中に私達を起こしたり、娘時代のことを懐かしがったり、年金の心配をしたりしてる。」

さわこさんは、「おばぁちゃんは、赤ちゃんではなくて一人の大人なんだ。」と改めて気づきます。

老いてゆくのもひとつの成長なんだな、と。

私の母のこと

さわこさんとは年齢も違うし、介護の環境も違うのですが、つい自分のことと重ねてしまいます。

私の場合は、母が認知症で老人ホームに入居しています。

同居して介護しているわけではないので、さわこさんやさわこさんのお母さんのように大変ではないのですが、自分の親が認知症でいろんな記憶がなくなっていったり、日常の生活も少しずつ手助けが必要になったり、と老いが進んでいくのは日々実感しています。

だけど、それほど悲観的にはなっていません。

とにかく、母には、転んで骨折したり風邪やインフルエンザにならず、心穏やかに、嫌な気持ちや不安な気持ちにならず、できれば「楽しい」とか「うれしい」とか思うことがひとつでも多くある日々を少しでも長くすごしてほしいのです。

私以外の親族は、母の認知症の度合いが少しずつ進行していくのを悲しむ向きもありますが、私は少し違います。

認知症が進んで、生活の色んなことに手助けが必要になっても、まだまだ母にはできることがたくさんあるからです。

そして、認知症が進んだ今でも、母はまわりの人を気遣ったり心配したりしています。

もし私が認知症になったとき、あんな風にまわりを気づかうことができるかしら?と思うと、やっぱり母はすごいなぁ、と思ってしまうのです。

さわこさんのお母さん

さわこさんのお母さんもステキな女性です。

さわこさんとお母さんは二人で温泉に出かけるのですが、そこでお母さんは、さわこさんに「おばぁちゃんが亡くなったら、家を売って自分が一人で住む小さなマンションを買う。」と言います。

さわこさんは、お母さんが一人で暮らすつもりなことに、ちょっと怒ったりしますが、お母さんは「さわこはさわこの人生、自分は一人でなんとかする。」と言い切ります。

帰りの電車の中で、お母さんは「おばぁちゃんは自分のことを娘だとわかっていないけど(忘れてしまっているけど)、それでも一日でも長く生きてほしいと思っているの。」とさわこさんに言います。

さわこさんのお母さん、ステキですね。

同じ娘として尊敬します。

私の母もいつか私のことがわからなくなる日が来るのでしょうけど、そんな気持ちになれるかなぁ。

私のことを忘れられるのは悲しいとは思うだろうけど、やっぱり、それでも私の母として一日でも長く生きてほしい、と思うような気がします。

2019年も今日でおしまいですね。

皆さん、どうぞ良い年をお迎えくださいませ。