なにやらいきなりむずかしい言葉ですが、行動経済学に興味があります。
10年以上前になりますが、働きながら大学院に通っていて、その時の修士論文の参考文献で行動経済学の文献にいくつかお世話になり、それがきっかけで興味を持つようになりました。
その後は、すっかりその手の本を読むことがなくなっていたのですが、今回、大江秀樹さんの「賢くお金を使う人がやっていること」という本を読みました。
これは、我々のお金に関する行動や判断を、行動経済学のいろんな理論に照らし合わせながら、わかりやすく解説している本です。
プロスペクト理論
その中で、私も「あるある!」と思ったり、「私の場合はそれはないなぁ」と思ったり、色々なのですが、「あるある!」と思ったのは、「『損のつらさ』は『得の喜び』の2倍以上」というくだりです。
ちょっと難しいですが、ダニエル・カーネマンという行動経済学者による「プロスペクト理論」という意思決定モデルがあります。(私も論文でお世話になりました。)
この理論を、ものすごぉく簡単に説明すると、
- 人間は損をすることを異常にきらう → 損失回避性
- 損かどうかは絶対額ではなく、相対的な感覚で決まる → 参照点依存性
だそうです。
損失回避性
例えば、株で100万円利益が出た場合と、100万円損をした場合だと、損をした時のマイナスの気持ちの方が、得をした時よりも2~2.5倍も大きいそうです。
これ、わかりますねぇ~。
そして、損した分を取り戻したくなるそうです。
損をした株を売ってマイナスを確定してしまう決断をするのはとてもむずかしく、「もしかしたら、今後上がって利益が出るかもしれない」と、多くの人がそのまま持ち続けてしまうそうです。
はぁ~、これもわかります・・・。
今売って損を確定してしまえば、それ以上のリスクはないのに、人は自分が損をして他の人が儲かるのは耐え難く、売らずにそのまま持ち続けるという、さらなるリスクがある方の選択肢を選ぶんだそうです。
はい、はい、そのとおりです・・・。
逆に利益を得ているときは、今ある利益を確定したがる傾向にあるそうです。
はぁ~・・・。
参照点依存性
これについては、大江さんは、次のような例を挙げています。
所得税が60万円源泉徴収されていたAさん、年末調整で2万円戻ってきました。
一方のBさんは、50万円源泉徴収されていましたが、2万円、追加徴収されたそうです。
Aさん:60-2=58万円
Bさん:50+2=52万円
絶対金額は、Bさんの方が6万円も少ないにも拘らず、Bさんの心情は「2万円も追加で取られるのか!」
一方のAさんの気持ちは、「やったぁ!2万円戻ってくる!」
はい、はい、おっしゃるとおりです。
なんか、お金をもらえる方が絶対的にうれしいんですよ。
特に後からもらえる(戻ってくる)お金って、「ごほうび」みたいで得した気分になるんですよね。
私のエピソード
上の例ほど顕著ではないかもしれませんが、最近、私にも、上の2つの理論とちょっと関連する(?)エピソードがありました。
teva のサンダルを公式サイトで買った時のことなんですが、当初、私は最新モデルのデザインを買おうとしていました。
最新モデルの定価は8,800円で、公式サイトでは5,000円以上は送料無料なので、これを買えば送料無料です。
一方、旧モデルはアウトレット価格で半額の4,400円。
ですが、5,000円に満たないので、500円の送料がかかります。
ここでの私の最初の心理は、なぜか、500円の送料が無料になることに心が惹かれたのです。
まぁ、最新モデルと旧モデルの違いっていうのも影響したかもしれないのですが、デザイン自体は、どちらかというと旧モデルの方が気に入っていたにも拘らず、です。
送料無料がそんなにうれしいのか?(笑)
で、いやいやよく考えると(よく考えなくても)、最新モデルは8,800円。
対して、旧モデルは4,400円+500円=4,900円。
絶対的な金額は明らかに旧モデルの方が安いのに、送料が無料になるということが参照点となり、それに依存して、最新モデルの方に心惹かれたんですねぇ。
「参照点依存性」か?
いや、もしかしたら、送料無料というお得なオプションが目の前にぶら下がっているのに、「送料500円を選ぶと、損をしてしまうのではないか?」と思ってしまったのかもしれません。
そして、私の心理は「損失回避性」に傾き、損をしない送料無料に心が惹かれてしまったのかも・・・?
人間の心理と行動はかくも不思議なり
結局、私は旧モデルの方を購入したのですが、ほんと、なんで送料無料に引かれたんでしょう・・・?
不思議です。
とりあえず、冷静になって、デザインも気に入っていて、価格も安い旧モデルを購入したので良かったのですが、こういう説明のつかない判断や行動って、他にも結構ありそうです。
そういう、人の心理や行動の背景を説明できる理論があると思うと、ちょっと楽しくないですか?
私だけ?(笑)